今回は『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』という本を読みましたので、こちらの感想を紹介したいと思います。
私は自閉性スペクトラム症の4歳の男の子を息子に持っているので、発達障害児の家族としての視点で感想も交えて話せたら幸いです。
『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』というタイトルからお分かりになるように本書のテーマは『愛着』です。
かつては、愛着の問題というのは特殊で悲惨な家庭環境で育った子どもの問題として扱われることが多いものでしたが、本書が出版された2011年には既にその認識は過去のものとなりました。
現在、『愛着障害』は一般の子供だけでなく、大人にも広くみられる問題として認識されています。
また、最近『発達障害』という言葉が使われることも多くなってきましたが、『発達障害』には、かなりの割合で愛着の問題が背景にあるのです。
『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』はどんな人におすすめ?
本書『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』は以下のような人におすすめです。
・自分の本心を抑えてでも相手と合わせてしまう人
・いつも醒めていて本気になれない人
・拒否されたり傷ついたりすることに敏感な人
・損だと分かっていても意地を張ってしまう人
・自分が愛着障害かもしれないと感じている人
本書は、現在生きにくさを感じている人にとって、どうすれば人生がもっと生きやすくなるか、より人生を実り豊かなものにするためのヒントが書いてあります。
私自身も、上記に該当する部分がいくかあり、本書を読むことでどうして今まで生きにくかったのかが分かったような気がしました。
そして、本書を読む前よりも、少しだけ人間関係を上手に築いたり継続したりできるようになったのではないかと感じています。
本書を簡単にまとめると?
『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』を一言でまとめると、お子さんがいる方はお子さんをいっぱい甘えさせてあげて、たくさん、たくさん、たっくさん抱きしめてあげてください、ということに尽きるかと思います。
なぜなら、子供が小さい頃に甘えさせてもらった経験、たくさん抱きしめてもらった経験は、その子が大人になった時に、安定した人間関係を築き、大きな成功を得るために非常に大きな役割を果たすからです。
うちには自閉スペクトラム症(知的障害)の男の子がいるのですが、その子と上のお姉ちゃんもいっぱい抱きしめて育てるようにしています。
特に、知的障害を持つ長男の方は、周りの子と比べて上手く物事ができずに劣等感を抱きやすいということもあり、それに配慮して育てています。
まだ、小さくて、そういった強い劣等感は感じていないようですが、将来、壁にぶつかった時にいつでも安心して戻ってこれるような安全基地に私たち家族はなりたいのです。
安定した愛着スタイルを持つことができた人は、対人関係や仕事において高い適応力を発揮します。
人と上手く付き合っていくだけでなく、しっかりした信頼関係を築き、それを長い時間にわたって維持することができるので、人生における大きな成功を手に入れやすいのです。
安定した愛着スタイルを持つ人は、どんな相手にも自分の意見をきちんと主張でき、その一方で不要な対立や衝突を避けることができます。それだけでなく困った時は自分から助けを求めることができ、自分の身を守ることも上手なのでストレスで鬱になることも少なくなるでしょう。
つまり、安定した愛着スタイルを持つ人は、人に受け入れられ、自分も受け入れることができるので、成功を掴み発展させていきやすいのです。
逆に、あまり抱きしめてもらった経験がない子供は、鬱や不安障害、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症になるリスクが高くなります。
しかも、離婚や家庭の崩壊、虐待やネグレクト、結婚や子供を持つことを回避、社会に出ることへの拒否、非行や犯罪に走ってしまうリスクも高くなる、という悲しい結果が報告されています。
なので、お子さんに安定した愛着スタイルをつくってあげるために、言い換えれば、お子さんの幸せのためにできるだけいっぱい抱っこして愛してあげることが大切なのです。
それでは、本書を読んでいて、ハッとさせられるようなことを簡単にまとめて紹介していきます。
愛着についての怖い実験の話
まず、私が本書を読んでいて背筋がゾッとするような恐ろしさを感じたのは、イスラエルの集団農場キブツで行われた実験的な子育てです。
ある進歩的で合理的な考え方の人たちは、子育てをもっと効率的に行う方法はないかと考え、ある方法を思いつきました。
それは、『一人の母親が一人の子供の面倒を見るのは無駄が多い。それよりも、複数の親が時間を分担して、それぞれの子供に公平に関わればより効率が良い上に親に依存しない自立した素晴らしい子供が育つに違いない』ということでした。
その画期的な方法は直ちに実行に移されましたが、何十年も経ってからそのように育てられた子供たちにはとても致命的な欠陥が生じやすいことが明らかになりました。
子供たちは誰かと親密な関係を持つことに消極的になったり対人関係が不安定になったり、愛着スタイルの形成に大きなダメージを負ってしまったのです。
カップルのどちらかが不安定型愛着を抱えている可能性は50%以上!
本書によれば、カップルのどちらか一人は、不安定型愛着を抱えている可能性が50%以上あるとのことで、ということは2組のカップルがいた場合、どちらかのカップルは愛着の問題で上手くいかなくなっている可能性があるということです。
これは、愛着障害がどういうものか知らないでの世渡りは、片目をつぶって自動車を運転するようなものではないでしょうか。
上手く愛を育めない理由が愛着障害のせいかもしれないということに気づけずに、愛が壊れてしまう、別れを選んでしまっているかもしれないのは悲しすぎますよね。。。
突出した成功をする上で愛着障害はプラスに働くこともある
意外かもしれませんが、夏目漱石や太宰治、川端康成など日本文学史上において突出した成功を収めた人物の中に愛着障害を持っていた人も多いのです。
夏目漱石は、自身の誕生を家族にあまり歓迎されず1歳の時に養子に出されてしまいました。そのため乳幼児期に特定の誰かとの愛着形成が上手くいかず、誰かとの親密な関係を持ちたいと考えてはいたものの、人と親密になることに強い不安を感じていたようです。
それもあって、漱石は自分自身の気持ちを人に伝えることが不器用で、それゆえに漱石は文学作品という体裁をとって自分のことを誰かに伝えようとしたのでした。
そのため、漱石の作風は、自分の傷ついた心をや自分の正体を見破られないように巧みに隠しつつ、いかに自分のことを表現するか、という二律背反した要求のもとにつくられた文学作品であり、微妙なバランスの上で成り立っているのです。
この事実は、愛着障害で苦しむ人々の心を少しは慰めてくれるかもしれません。
スティーブ・ジョブズも愛着障害を持つ成功者として本書では紹介されており、愛着障害によって欠落した心を埋めるために、彼も昼も夜もずっと成功を求めて邁進し続けたのでしょう。
まとめ
まとめに入ると、やっぱり、繰り返しになりますが、お子さんのいらっしゃる方は、お子さんをたくさん抱きしめて、抱っこして、愛してあげてください、ということに尽きるかと思います。
愛着障害を持って成功する人もいますが、それが成功者本人にとって果たして幸せなことだったのかというと、それは私自身には幸せとは言えないように感じました。
やっぱり、私自身は誰かに愛されたいし、愛したい。
自分の子どもにも愛されないことで苦しんでほしくないし、愛することで苦しんでほしくない。
理想を言えば、愛することも愛されることにも臆病にならず、進んで人を信じ、愛することも愛されることも受け入れてほしいです。
愛着障害は子供だけでなく、大人にも潜んで、その行動を知らず知らずのうちに左右します。
それは時には自らを損なってしまうような危険な方向へ導き、人生さえも歪めてしまうのです。
愛着の問題は、それほど重要な問題であるにも関わらず、一般の人だけでなく専門家の認識も遅れているのが現状です。
愛着の軽視によって、大切に子供を育ててきたはずなのに、愛着障害をベースとする問題が増え続けている、ということもそれを裏付けています。
私も、愛着という要素は、効率主義に反するものとして蔑ろにされてきたような気がしています。
私自身も、もしかしたら、効率や合理性を重視するあまりに、自分の子どもを抱きしめる機会を減らしていたかもしれないと心配になりました。
この本を読んだことで、以降は、よりたくさん子どもを抱きしめてあげたり、子どもと一緒にいられる時間を増やしたりしていきたいと思っています。
今回、『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』を読むようになったきっかけは『知的障害は治りますか?』という本を読んだことがきっかけでした。
その本には知的障害を改善していく、あるいは治すには、PTSDと愛着障害を治すことが大切だと書かれていたのです。
知的障害の人が抱える愛着障害の『察してもらえなかった悲しみ』や『そこはかとない不全感』は、知的障害の人の神経の発達を抑えつけている部分があり、それを取り除いていく神経系の発達が起きるのです。
それが、私自身の幸せにも繋がっていくような気がしているのです。
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